ぐるぐる回って・・・・またここに来る。
そう、それは、いつまで経っても抜け出せない
まるで迷宮のような・・・・
そんな感覚。



螺旋



「リョウ、リョウ! 起きてよ、リョウ!!」

ベットに丸まっている少年を揺すっているのは、蒼い髪を高い位置で
ポニーテールにしている少女。
さっきから何度揺すっても少年が起きる気配はなく、
少女の揺する力も段々強くなっている。

「もう! 朝食だってば! リョウ!!」
「ルカちゃん、ほっときなよ。リョウ君、朝弱いんだ〜。」

銀色の短い髪をもつ青年は手を振って彼女を制す。

ルカと呼ばれた少女は笑いながら少年を見ている、その青年、
サクラを見てため息をついた。

「でも・・・」
「昨日、遅くまで起きてたみたいだしね。リョウ君は夜型なんだよ。」


そういう問題じゃない気がする・・・・。

彼が夜型なのは一向に構わないのだが、これから旅に出るのに朝食も食べないのは
いかがなものか。
いや、その前に出発の時間に遅れそうだ。
レオナやクロードはもう食堂に足を運んでいる。

毎日、絶対宿に泊まれる保障はないし野宿だって覚悟の上だ。
しっかり、食べる時は食べておかないと・・・・。



そう思ったルカはとうとう最終手段に出た。


「・・・・わかったわ。どうしても起きないというのなら・・・。」


そう言うと彼女は踵を返して洗面所に行く。
暫くすると、彼女はコップ一杯の水を持って現れた。
ご丁寧にその中に氷まで入れてくれている。
今後の展開が手に取るように理解できたサクラは、
笑いながらその様子を観察した。


「・・・・リョウ、起きて。」


最終警告。


「・・・・・・。」


少年は、夢の中。


「・・・・。」


ルカは、彼の顔に勢いよく氷水を浴びせた。



・・・・・・・


「〜〜〜っ!!! 冷たい!!!」

余りの冷たさにリョウは飛び起きる。
顔の上に乗っていた氷が落ちて彼の足元に落ちた。

「え!? 何?これ!!」


状況が全く理解できていない彼に対し、ルカはにっこり微笑んで言う。


「おはよ。リョウ。」


女の子は強いなぁ・・・サクラは笑いながら、そう思った。







リョウが食堂に入ったのはそれから15分後。
レオナはもう待ちくたびれたらしく、先に食事を始めていた。
テーブルに止まっているクロードにパンをあげている。
ルカやサクラも急いで席について食事を始めた。

リョウは苦笑して席につく。
今度から、眠れない時に本を読むのは止めよう・・・・。

そう誓う。




「今後の事だけど・・・。」
食事が終わり、一息ついた所でレオナが口を開く。
お茶を飲んでいた、リョウたちはコップを置いて彼女を見た。


「言い伝えにはこうあるわ・・・・

無に帰す存在、我を忘れ外の世界に飛び出すとき、無に向かう時を止める歯車が集まり、
その存在をあるべき所に帰すであろう、世界の調整を成す生命の螺旋を
手に入れて新たな時を構築せん・・・・。」


その言葉は以前リョウがレオナから聞いた言葉だ。
ただ、聞いたのはその一部だったらしい。
こんな続きがあるなんて、知らなかった。


「じぁあ、僕たちが次にするべきことは、生命の螺旋を手に入れるってこと?」

サクラが軽い口調で聞き返す。


「・・・・恐らくね。 無に帰す存在っていうのはZEROに間違いないから。」

レオナはそれに素っ気なく返す。


「でも・・・・生命の螺旋って一体何なんだろう。」

リョウは呟く。それにルカも頷いた。


「・・・・・それは、知らないわ。私は、この言い伝えしか知らないから・・・。」

その内容までは分からないとレオナは呟く。
彼女の眉が少し下がった気がした。


正直、レオナが頼りだったのだ。彼女は何でも知っていると思っていた。
だから、彼女が自分たちに道を示してくれるのだと・・・・。
もちろん、そんなのは自分の勝手な想像だ。
彼女が何でも知ってる、彼女について行けば大丈夫。
無意識な自分の甘えを痛感する。
リョウは何だか、自分が情けなくなるような思いがした。


「でも、言い伝えがあるって事は、何かしらどこかに手がかりがあるはずです・・・。
何か、それに関するものがないと言い伝えなんて出来るはずがありませんから。
ね?レオナ。」

彼女の表情の変化を読み取ったのかルカが言う。


まだ、次にやるべき事が決まっただけじゃないか。
ただ、方法が分からないだけで・・・。
それを探して解決するのが、自分たちの役目だ。


「・・・・・そうね。」


彼女の表情を見て、レオナは言う。


初めて会った時、ルカはどことなく頼りなさげで、守ってもらうばっかりの
少女かと思った。
いつも他の人の背に隠れる少女のような印象があった。
しかし、それは間違いだったのか・・・・。


思いを決めれば、こんなにも前を向いていけるものなのか・・・。
この少女はそんなに強かったのかとレオナは思う。




「そうね・・・ルカ。」


レオナは小さく呟いた。





BUCK/TOP/NEXT

-----------------------------------------------------------------------

(儚げな表情のなかの強い意志・・・)


2006/1/15