記憶のカケラ



夢を見た・・・・。



周りには沢山の贈り物・・・ああそうだ、この日は私の11歳の誕生日だった。
大きなテディベアが欲しいとお父さんにねだったら、誕生日に買ってあげると言ってくれたんだ。


自分の身長よりも少し小さなそのぬいぐるみは私の髪と同じ栗色の毛をしていて
黒い大きな目がとても可愛らしかった。
誕生パーティに屋敷に来てくれたお客様は皆、よかったですねと笑ってくれて、それが誇らしくて
私は満面の笑みで頷いた。


金色の髪の男の子・・・・そう、クロード。
貴方と出会ったのもこの時が初めてだったのね。
金色の髪がまるでお日様のようにキラキラ輝いていて、私は思わずその髪の毛に手を伸ばしたんだ・・。
そしたら貴方は照れくさそうに微笑んでこう言ったわ。


「はじめまして。」



そう、とてもとても幸せな記憶・・・。

この時私たちはこの後何時間後にどんなことが起こるのか、全然知らなかったね・・






「レオナ」
小さな呼び声に少女は目を覚ました。
起き上がり、眠そうに目をこすると呼び声の方に視線を移す。
金色の鳥が彼女の肩に止まった。

「クロード・・・おはよう。」
少女はその鳥に軽く笑いかける。
「ぐっすりだったね、レオナ。いい夢でも見たのかい?」
「・・・・まさか、私、寝坊?」
怪訝そうに彼女は鳥に問いかける。
そんなに眠ってしまったのだろうか・・・。
「いつもより1時間位かな。と、言ってもそれでも君が僕の次に早起きだ。」
そろそろリョウたちも起きてくるんじゃないかな、とクロードは続ける。



歯車がそろったその日、レオナたちはレノールの次の小さな村で一泊していた。
次にやるべき事を説明する為にはどこか落ち着ける場所で話す必要があったから。
リョウは、彼女がどうして自分たちが次にやるべきことを知っているのか不思議がった。
サクラは特に聞こうとしなかったし、ルカも特に追求することはしなかった。


ルカが追求しなかったのは彼女に歯車の情報を与えたのはレオナだったから、レオナが次にやるべき事を
知っていてもおかしくないと思ったからなのかもしれない・・・。




「小さい頃の夢を見たの・・・。」
彼女の言葉にクロードは軽く目を瞠る。
「11歳の・・・誕生日。」
「僕とレオナが初めて会った日だね。」
彼の言葉にレオナは頷く。

そう・・・2人が初めて会った、忘れられないあの日だ。


「君は確か、プレゼントの大きなクマのぬいぐるみを持ってた。」
「テディベアよ。」
「同じものだろう?」
「お客様に見せていたら、お父さんが貴方を連れてきたわ。」
「そう・・それが出会いだったね。」


白い可愛らしいワンピースに身を包んだ少女をクロードは今も忘れる事は出来ない。
肩まで垂らした栗色の髪がとても綺麗で、愛らしい表情に思わず見惚れた・・・。
でも、その表情の奥に、何か強い力を感じた。
今の彼女は、あの頃のような表情はないが瞳に宿る強い意志の力は変わらない。


「その時のお父さんの言葉、覚えてる?」
「ああ、もちろん。忘れたら大変だ。」
「そうかしら?」
「だって、そうだろう。未来に関わる。」


そう言ってクロードはくすりと悪戯っぽく目を細める。


「未来・・・ね。」


レオナはそんなクロードを横目で見るとわざとらしく肩をすくめた。
そして微笑む。
彼だけに見せる、あの頃の笑顔で。

「・・・久しぶりに君がしっかり笑ったのを見た気がするよ。」
「貴方の前では・・・・笑ってると思ったんだけど。」
「口元を軽く上げるのは笑ったうちに入らないと思うよ。」


あまり笑えなくなったのは・・・無理もないかもしれないけど、やっぱり微笑んでくれると嬉しい。


「じゃあこれからは笑うように心がけるわ。」
「期待しないで待っておくよ。」


無理して笑うくらいなら、笑わないでくれたほうがいいから。


「それで、夢は僕と出会った所でおしまいか?」
「そうね・・・そこで目が覚めたわ。」
「よかったじゃないか。いい夢だけの部分で目が覚めて。」
「そうね。起こしてくれて感謝するわ。」


そう言ってレオナはベッドから立ち上がる。
洗面所に向かおうとして、彼女はその足を止めた。


「クロード・・。」
「何?」
「・・・・・ごめんなさい。」
「・・・・」

彼には何度言っても足りない。
レオナは俯いて床を見つめる。

あのことか・・
クロードは彼女が何を謝っているのかすぐに理解した。
7年前のあの日の出来事・・・。
7年経った今でも、彼女にとっては昨日のことのように思えるのか・・・

「君の謝罪は聞き飽きたよ?」

軽い口調でそういうと彼は羽を広げて飛び上がる。

「リョウたちを起こしてくるよ。朝食の時間だ。」

彼はレオナを追い越し廊下へ飛んでいった。
それをレオナはじっと見つめる。

「聞き飽きた・・・と言っても私は何度言っても足りないわ・・・。」

償う方法など・・・・ないのだ。
どんなことをしても、足りない。
どんな言葉も足りない。



「あ、そうだレオナ。」
クロードは廊下をUターンして彼女の肩に止まる。
「・・・どうしたの?」
「聞き忘れた。君は覚えてる?あの日、君のお父さんが言った言葉。」
「貴方と会った後、私たちに言った言葉よね・・・。覚えてるわ。」
そう言うとクロードは嬉しそうに目を細める。


そう、それはあの後起こる忌まわしい出来事の、忘れることの出来ない出来事の、
その記憶の中にあるたった一つの光。
暖かな記憶。父親が自分とクロードに言ったあの言葉・・・。


「「彼が(彼女が)、将来結婚する定めの者だよ。」」




確かな約束。
今も・・・続いてる。







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ほんのり甘め?
次回から本編です。

2006/1/4