意識が途切れた。
・・・・その後は・・・何も覚えていない・・・・
ただ、目が覚めたときに、皆が余りにも心配そうに私を見つめるから・・・


私は、ただ謝った。
ごめんなさいと。


絆 




「じゃあ、何も覚えていないんだね、ルカちゃん」
「・・・・」
サクラの言葉にルカは小さく頷く。
あの後、サクラがルカを背負って野営地まで運んだのだ。
それから15分後位にルカが目覚めた。
彼女は自分が意識を失っていた間、何があったのか記憶にないと言う。



「・・・・リョウ、怪我大丈夫?」
ルカは自分が付けた傷を見て言う。
その傷は深くはないが、彼の肩には傷跡がしっかり残っていた。
その傷は・・・・自分が付けたのだと言う。
自分の意識がなくなっている内に、誰かが自分の体を乗っ取り、リョウに傷を負わせたのだ。
ルカの表情を見たリョウは慌てて手を振る。
あれは、不可抗力だ。
ルカは自分で傷つけようと思って剣を振るったのではない。
それに、彼女は自分に警告してくれた。

「逃げて」と。

それで逃げなかったのは自分だ。
傷を負うなどと、覚悟の上なのだ。



「でも・・・・」
「ルカ、じゃあこれで、この前のをチャラにしよう?」
以前自分は彼女に傷を負わせた。
リョウはもちろん、これを無かったことなどにはしたくなかった。
むしろ、この事はずっと心に留めておく。
しかし、こうでも言わない限りルカはずっと自分を責めるだろう。
だから・・・・・



「ね?」
リョウの微笑みにルカは戸惑った。
しかし、暫く俯いた後、小さく頷いたのだった。





「・・・・しかし、何だったんだろう・・・ルカに取り憑いていたのは・・」
クロードの言葉に周りの人間は困惑した表情を見せた。
分からない。
しかし、取り憑いていたものは確かにリョウに危害を加えようとしていた。
それは事実だ。
「・・・・ZEROの手下?」
サクラの言葉にレオナは首を振る。
「・・・・そう言いきるのは早いわ」
「だけど、僕らに危害を加えようとするなんて・・・ZEROしかいないよ」
レオナの返事を受けて、声を上げたのはリョウだった。
もうすぐアルデストに到着する。
しかし、そこで生命の螺旋が手に入るとか限らない。
時間は後、どの位残っているのだろう・・・・



「間に合うのかな・・・・・」
ぽつりとそんな言葉を漏らす。
こんなこと、言ったって意味がないのに・・・・
こんなことを言う前に、自分達が前に進まなければいけないのに・・・・
リョウのその言葉に、誰も答えることはなかった。










「そういえばさ・・・」
見張りをしているサクラが隣に座っているリョウに声をかけた。
ルカは、先ほどの出来事で体力がまだ戻っていないのだろう。
ぐっすりと眠っている。
見張りはサクラだったが、リョウも眠ることが出来ないので一緒に見張りをしているのだ。
「ルカちゃんに取り憑いてた奴さ、言ってたよね」
「何がです?」
「レオナちゃんとクロードの事、”姫君と守人”だって」
気になる言葉。
それはリョウも同じだった。
「ええ・・それに守人は姫君を監視する役割・・・・だとも言っていました」
2人の関係・・・・自分達にはよく分からない。
クロードの呪いと何か関係あるのだろうか・・・・



「恋人・・・って感じじゃないよね、あの2人」
そのような、甘いふわふわした関係のようには思えない。
そしてその様な雰囲気も感じられないのも事実。
そう彼らからはもっと・・・・・もっと何か・・・恋人よりも深いものを感じる。
「夫婦とか?」
「いや、まさか」
サクラの呟きにリョウは思わず即答でツッコミを入れる。
だよねぇ、とサクラは笑うとまた考えを巡らせた。
恋人でないにしろ、お互いを大切に思っていることは間違いないようだ。
固い絆・・・・それを感じる。
リョウは今、ここにいない2人を想って、空を見上げた。












野営地から仲間と離れて、2人だけで話すのは、嬉しいと同時に申し訳ない気がした。
それは、仲間のいる所では、まだこの話が出来ないということを意味するから・・・・
それを察してくれているかは分からないが、リョウたちは何も言わない。
クロードはそんな彼らに感謝しつつ、目の前に腰を下ろす、栗色の髪の少女を見つめた。



「明日、アルデストに着くよ」
「そうね・・・・」
長かった・・そうクロードが漏らすとレオナは小さく微笑む。
そう、目的地であるアルデストに着く。
そこに生命の螺旋があるかは・・・・分からない。
しかし、彼女の直感が告げる。
あの街には・・・・何かがある・・・・。
彼女はこれまで自分の直感だけは信じてきた。
それは、自分の家族が彼女に教えてくれた事だから。
自分の感覚だけは信じなければいけない・・・・例え、他の全てを信じられなくても・・・・・
そこまで考えて、レオナは首を振った。
いや、もう一つ信じるものがあるではないか。
隣に座る淡い金髪の少年に視線を移す。
彼女の視線に気がついたのか、クロードは「何?」と首を傾げた。



「・・・・・信じてるわ」
小さな呟きが、響いては消える。
クロードは一瞬目を見開くと、嬉しそうに笑った。
「嬉しいな・・・・君にそう言ってもらえるなんて」
少年は、少女の手を取り、手の甲に口付ける。



「レオナ・スタルウッド・・・・・僕の生きる証・・・・」
その言葉を聞いて、レオナは泣きそうになる。
やはり、思ってしまうのだ。
自分はこんな事を言われる立場ではないと・・・・。
声を上げて、大声で泣きたい・・・・
だけど、泣いてはいけない。
許されない・・・・まだ何も終わっていないから。
自分の定めが終わったら、思いっきり涙を流したい。
そう、この人の隣で・・・・・
だから、今は「愛してる」よりもこの言葉を。



「クロード・ツイン・・・・貴方が、私の生きる意味・・・・」
そして2人はお互いの手を握りしめた。
強く、強く・・・・・
まるで、お互いの存在を確かめ合うように・・・・・




風が強く、まるで竜巻のように吹き荒れ、レオナの長い栗色の髪とクロードの、1つに括ってある金色の髪を舞い上げる。
それは、まるで大地の怒り。
彼らが、ここに存在することを許さないような・・・・この星の怒り・・・・



「レオナ・・・・アルデストに着いたら、リョウたちに話そう」
「・・・・何を?」
「僕の、この呪いのこと・・・・」
それは必然的に、自分達の過去を話すという事になる。
レオナは一瞬顔を歪め、声を上げようとしたが、クロードの表情を見ると言葉をい失う。
彼の瞳は穏やかだったから・・・・
まるで凪いだ海のように・・・・



「・・・・アルデストに着いたら、きっと嫌が上でも僕達の過去は明らかになる・・・・そんな感じがするんだ」
だから・・そうなる前に、自分達で・・・・自分達でこの傷を彼らに見せよう。
「どうして・・・そう思うの・・・・・?」
「直感・・・と言ったら君は信じてくれるかな?」
感じるのだ。
旅は・・・・・・もうすぐ終わる・・・・・・
しかし、それは、自分の望まない結末のような・・・・そんな漠然とした不安が過ぎる。
自分達は・・・・何かが欠けている。
何か・・・この旅で大切なことが・・・・・




クロードの手をレオナは再び強く、握り返した。
「・・・・信じるわ・・・・クロード・・・」



見せたのは、穏やかな微笑み。
そして小さな決意。



夜が明ける・・・・・
目的地に、到着する・・・・・









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もう、立ち止まるのは終わり・・・・一緒に進もう





2006/07/01