Eden


seacret  2




「姫様!ご無事でしたか!!」
城に戻った瞬間、侍女によって出迎えられたスピカは苦笑して彼女の抱擁を受けた。
それを見て、スバルは肩をすくめる。



「ご無事って・・・攫われた訳じゃあるまいし・・・」
「何を言ってるんですか、スバル様!!姫様はこんなにお可愛いのだから誰かに攫われるかも
しれないじゃないですか!!」
凄い剣幕で叫ぶ侍女にスバルは耳を塞ぐ。
その時、
「お可愛いって・・・・医者に見てもらった方がいいんじゃないか・・・」
と呟いた声が侍女にはしっかり聞こえていたようで、彼女はまた喚きはじめた。



「あー・・はいはい。とりあえずニナ、そいつ確かに届けたからな。あとは任せるよ」
「ありがとうございます、スバル様。あら・・リア様はどうなさったのですか?」
「あいつは、客人と一緒に戻ってくるよ。もうすぐ着く頃だから・・・」
そうスバルが言うと、そうですかと侍女、ニナは微笑みスバルに頭を下げる。



「ありがと!スバル・・・」
侍女に手を引かれながらスピカはスバルにお礼を言った。
騎士団の仕事中に自分の捜索を頼まれたのだ。
無駄な仕事を増やしてしまっただろう・・・・
隊長、副隊長の2人が抜けて、騎士団の方は大丈夫だろうか・・・?



「別にいいって。ちょうど外に出たかったしな」
そう言ってスバルは門の方に出て行った。
そろそろリア達も到着するだろう・・・。






「とーちゃっく!!」
門の前に2頭の馬が並び、桃色の髪の少女が馬から飛び降りた。
少女のスカートがふわりと揺れる。
「ルナ様・・・はしたないですよ・・・」
「あら、いいじゃない。別に見えるわけじゃないし、下にはちゃんと穿いてるし」
ジャックリードのため息も、ルナは笑って流す。
そういう問題じゃないよなぁ・・・とリアは思うが口には出さないでおく。
ルナとは従兄弟という関係だが、めったに顔を合わせたことはない。



最後に会ったのは、たしか10歳頃だ。
それ以来、写真も見てなかったから、顔を見たのは7年ぶりとなる。
レトリア国に住んでいるから頻繁に会いに行くことも出来ないし
いや、それ以前にリアはもうルナに会うことはないだろうと思っていた。
親戚同士なのになんて薄情な、と思われるかもしれないが実際リアはそう思っていたのだ。



しかし、彼女は目の前に現れた。
リアは、この国に来た理由が留学と言った彼女の言葉がどうも信用できない
何故・・と言われたらなんとなくとしか言いようがないのだが・・・・



「これも・・・血かな・・・」
ぽつりと呟いた言葉は、ルナとジャックリードには聞こえなかった。
「・・?何か言った?リア」
「別に?」
リアは行こうと言って、城の門をくぐった。








スピカが仕度を終えて謁見の間に姿を現すと、そこには先ほどとは違う装いのルナの姿があった。
隣にいたジャックリードがスピカを見ると微笑んで頭を下げる。
スピカもそれを見て微笑むとルナに向かって手を振った。
ルナもにっこり笑って手を振る。
スバルとリアは護衛の為、扉のすぐ傍に立った。



「待たせたね」
そんな声がして声のした方を見ると、フェルノーム国の国王でありスピカの兄であるイアン・フェルノームの姿があった。
その隣には第一王女であり、姉であるミモザ・フェルノームの姿もある。
「フェルノーム国国王、イアン・レンティシア・フェルノームだ。話はレトリア国王から聞いているよ、
ルナ・マリア・ランネスレッド嬢。フェルノーム国へようこそ」
そしてイアンはにっこり笑った。



ルナは礼を取り、よく通る声で
「ありがとうございます、陛下。ルナ・マリア・ランネスレッドでございます」
流石は名家のご令嬢。
先ほどの振る舞いからは想像できないような柔らかな物腰でルナは礼を取る。
スピカやスバルは、呆然とルナを見つめた。
リアだけは、くすくすと笑っている。



「スピカ、彼女はこれから1年間、フェルノーム国に留学することになったんだ」
「留学?」
イアンの言葉にスピカは彼に視線を向ける。
「うん。レトリア国王から頼まれてね。親友のお嬢さんを是非そちらで預かってほしいって」
ルナに視線を戻すと彼女はにっこり笑って頷いた。



「フェルノーム国は、薬草学で有名だろう?」
内陸部にあり、気候も温暖なフェルノームではいろいろな植物が育つ。
病気や怪我によく効く薬草も多くの種類のものが生えており、そのお蔭でフェルノーム国は薬草学が発達している。
「私、レトリア国で薬草学を学んでいたの。そしたらお父様が是非、本場のフェルノーム国で勉強してこいって」
ルナはにっこり笑う。
「城の中には薬草学のエキスパートもいる。設備も整っているしもってこいだと思ったんだよ」
レトリア国王とは仲がいいしね、彼の頼みじゃ断れないよとイアンは笑う。



「ルナ・・でいいかな?」
「はい、陛下」
「君の荷物は部屋に運んでおくよ。スピカと町で会ったんだって?」
「はい、スピカ姫とは既に面識を得ています」
ルナの言葉に、イアンはくすくす笑うと言った。
「友達になったんだって? スバルから聞いたよ」
イアンの言葉にルナは顔を赤くする。
自分は仮にも一国の姫君に軽い口をきいていたのだから・・・



「これからもスピカのこと、よろしく頼むよ」
「初めて出来た、女の子の友達だもの・・ね?スピカ」
ミモザも優しくスピカに言う。
つまり2人はこう言ったのだ。
今まで通りに接してやってほしい・・・と。



「お姉ちゃん!」
スピカが嬉しそうな声をあげるとミモザはにっこり笑った。
「よかったわね」



「じゃあ、食事にしようか」
イアンも笑うと席を立つ。
その後にミモザも続いた。
「いらっしゃい、2人とも」



スピカはルナを見ると小さく呟いた。
「・・・敬語じゃなくて・・・いいからね?ルナ・・・」
それを聞くとルナは一瞬目を瞠り、そして頷く。
「私も、嬉しい・・・今まで同い年の友達いなかったの」
「そうなの?」
「ん」
意外だ・・・そう思ったが、ルナの立場を考えるとそうなのかもしれない・・・。
彼女は国王の親友であり、側近である人物の一人娘なのだから・・・



「2人とも、広間に移動を」
そう言ったリアの言葉に、2人は微笑んで隣の広間に移動した。






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2006/04/22