Eden


seacret  1





「ああ・・・やっぱり、スピカって王女様だったのね。」
ルナはスピカの方を見て、にっこり笑った。
「・・・気がついてたの?」
スピカは、気まずそうにルナを見た。
ルナは、なんとなくねと肩をすくめた。



「まぁ、初めは育ちのよさそうな子だな・・とは思ったわ。
物腰が柔らかい感じだし。
でも、自己紹介のとき、リテシアって言ったでしょ?」
「うん・・・」
ルナに、王女とばれないように、自己紹介のときにスピカは「スピカ・リテシア」と自分の名を告げたのだ。



「私、フェルノーム国の第二王女様の名前は、スピカ・リテシア・フェルノームだって聞いてたし」
ちなみに第一王女様の名前は、ミモザ・ラグネス・フェルノームよね?とルナは続ける。
スピカはぽかんとして彼女を見た。
王族の正式な名前を知ってるなんて・・・
一般市民じゃ考えられない。
しかも、大きく表舞台に出ないスピカの正式な名前まで知っているなんて・・・



「お前・・・何者だ・・・?」
スバルは警戒の表情を見せると、スピカを背にして一歩前に出る。
腰に差してる剣に手をかけた。
それを見たリアがぎょっとして口を開く前にルナの傍にいた、男性ジャックリードが口を開く。
「ルナ様、順を追って説明しなければ駄目ですよ・・・」
あれ・・とスピカは思う。
さっき、ジャックリードはルナの事を呼び捨てにしていたような気がするのだが・・。
気のせいだろうか・・・
ジャックリードは人の良い微笑みをスピカに見せると言った。



「突然のご無礼をお許しください、スピカ姫。
私は、ジャックリード・エドルカ。こちらの、ルナ・マリア・ランネスレッド嬢の従者をしております。
そして、こちらが我が主、エドワード・フェル・ランネスレッド様のご息女、ルナ・マリア・ランネスレッド嬢で
ございます」
そして、ジャックリードは頭を下げる。
ルナもスピカを見て、にっこり笑った。



「私、今日城の客人として、貴方のお城に行くことになってたのよ」
「え!じゃあ、行かなければ行けない所って・・・」
「フェルノーム城よ」
ルナは苦笑したように頷く。



「そんな!そんな、ルナ!私、心配して損したわ!!」
「え?」
「だって、私、城に戻ったらルナにはもう二度と会えないんじゃないかって!そう思ったもの!」
そしてスピカはルナの手をぎゅっと握る。
まさか、彼女が城に招かれていた客人なんて!
せっかく出来た友達、城に戻ればもう二度と会えないんじゃないか・・・そんな不安がスピカを渦巻いていた。
だけど、城の客人なら、きっと連絡を取ることも可能だろう!



「スピカ・・・・・私のこと、そんな風に思ってくれたなんて!!」
ルナはスピカをぎゅっと抱きしめる。
そして、笑いあった2人を、スバル、リア、ジャックリードは呆然として見つめた。
この2人は・・・いつの間に仲良くなったのだろうか・・・・



「・・・・エドワード・ランネスレッド・・・どこかで聞いたことがあるな・・。」
ふいにスバルが口を開く。
それに気がついたリアは、ああ・・と呟く。
「エドワード・F・ランネスレッド・・・レトリア国国王の一番の側近。
そして、レトリア国王の親友でもあるお方だよ。」
それを、聞いてスバルも思い出す。
レトリア国には大変有能な側近がいて、常に国王をサポートしている、そして
そのおかげでレトリア国は、政治状態がとても安定している・・と。



「で、そのランネスレッド様の一人娘が・・・」
「彼女、ルナだよ」
スバルの言葉を、リアが引き継いだ。
リアの声は穏やかだ。
しかし、その瞳は悲しみに揺れていた。


「リア・・?おい・・」
スバルの声で思わず我に返る。
そうだ、考えすぎだ。
彼女が、どうしてこの国に来たかなんて・・・・そんなはず、あるわけないのだから・・・・
「ああ・・ごめん。なんでもないよ」



「ねぇ、ルナ・・・、ルナってリアのこと知ってるの?」
スピカはルナに尋ねる。
先ほどの彼女とリアの反応、初対面の反応ではない。
それどころか、以前から知っていたという反応だった。
それを聞くとルナは、ああ・・と頷き、リアに視線を向ける。
その視線を受けると、リアはきょとんとした表情で、2人を見た。



「リアはね、私の血縁関係にあるの。」
「えええっ!?」
ルナの言葉にスピカは驚きの声を上げる。
思わず、声が裏返ってしまい、おかしな声が出たがこの際気にしないでおく。
スバルも、びっくりしてリアの方を向いた。
当のリアは何でもないかのように微笑んでいる。しかし、どこか苦笑した表情があった。



「け、血縁関係・・・?」
「そう、私の・・・・」
「僕の母とルナの母が姉妹なんですよ」
ルナの言葉を遮り、リアが説明する。
ルナはその言葉に頷く。
「つまり・・・・従兄弟ってこと?」
「まぁ、そういうことになるわね」
スピカの言葉に、ルナはにっこり笑う。
しかし、その後肩をすくめて、
「でも会ったのは私達がとても小さい頃よ。写真も当時のものしかなかったし」
でも、リアは全然変わってなかったから今になっても分かったけどねと言った。



「ルナも、全然変わってないよ。小さい頃のままだ。」
「あなた・・・それ失礼な発言だって分かって言ってるの・・・?」
女性に対して変わってないだなんて・・とルナはぶつぶつ呟く。
それを聞いて慌ててリアはごめんと苦笑する。



「ああっ!もう、積もる話は後だ!時間がねぇぞ!」
スバルは時計を見ると、叫ぶ。
「特に、スピカ!お前、先に行って準備があるだろが!!」
その言葉にスピカは、あっと額を叩く。
そうだ、自分は今日の来客を迎えるための仕度をしている最中に城を抜け出したのだ。
それを思い出すと、スピカは軽く青ざめる。
「リア!俺こいつ城まで連れて行くから、お前はそっち頼むぞ!」
「うん、了解。スバル、姫を頼むよ」
「おう」
そう言うと、スバルは馬に飛び乗り、スピカに手を差し出す。
スピカはその手に掴まるとスバルの後ろに乗った。



「ルナ、後でね」
「うん!」
そして、走り出す馬を見送るとルナはリアを見て笑った。
「どしたの?リア」
「ルナ・・・」
リアは、ルナを真っ直ぐ見ると口を開く。



「どうして、この国に?」
「え・・?」
「誰に言われたの?ここに来るようにって・・・ここに来た目的は何?」
リアの言葉にルナは微かに、しかしはっきりと目を瞠った。
風が吹く。
ルナの桃色の髪とリアの茶色の髪が揺れる。



「留学よ」
「留学?」
目を見開くリアに、ルナはにっこり笑った。
「あら、私がここに来ちゃいけない理由でもあるの?」
「いや、そういう訳じゃ・・・・・」
「詳しいことは、城に戻れば国王陛下がご説明なさるわ」
そう言うと、ルナはジャックリードの手を取り、馬に乗る。
リアは、暫くそのまま黙っていたが、やがて自分も馬に乗った。









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(これは偶然?それとも・・・・・・)





2006/04/16