Eden


金と銀  1



リアが仕事に戻ると、スピカは城の中に戻り自分の部屋を目指した。
途中、聞きなれた声がして足を止める。


「嫌よ!!何言ってるのよ、馬鹿!」
「まぁまぁ、落ち着いて。ちょっと言ってみただけじゃないか。」
「そういう時は絶対何かしら魂胆があるに決まってるわ!吐きなさい、
何を企んでいるの!?」

「そんなに目くじら立てると顔にしわが・・・・」
「何ですってーーーーーー!!!」


声のする方に歩いていくと、やはりというか、何というか・・・・
予想通りの人物がいて、スピカは小さくため息をついた。


「あら、スピカ。」
「え?スピカ?」


スピカに気がついて2人は笑いかける。



1人は金色の巻き毛を肩まで下ろした女性、もう一人はやはり金色の髪をした青年だ。
ただ、男性の方の髪にくせは無い。
瞳の色もやはり2人とも同じで淡いグリーンだ。
これはスピカと同じである。

そう、この2人は・・・・・


「また、喧嘩? お兄ちゃん、お姉ちゃん・・・。」
苦笑して駆け寄ると2人は困ったように顔を見合わせた。


そう、この2人はスピカの兄と姉なのである。



「だって、聞いてスピカ! イアンったら私に恋人はいるのか?なんて聞くのよ!!」
助っ人が来たとばかりに巻き毛の女性がスピカに言う。
その剣幕は凄まじいもので、思わずスピカは1歩下がった。



「兄として当然の事を聞いたまでじゃないか、何をそんなに怒るんだ?」
「双子でしょう!? どっちが上かなんてあんまり関係ないわ!!」
「もし、いないのだったら僕がいい人でも紹介しようか?って言っただけさ。
どうしてそんなに怒るのか分からないよ。」


イアンと呼ばれた青年は肩をすくめてスピカを見る。

「いるもいないもイアンには関係ないわよ!プライバシーだわ!!
兄妹だからって何でも話さなきゃいけないの!?」

「で?いるのかい? ミモザ。」

「っ!! うるさいわね!いないわよ!!これで満足!?」



もうこれ以上はらちがあかないと判断したのだろう。
ミモザはヒステリーに叫び散らした。
恐らくこの声は上の階まで余裕で響いているに違いない。





「やれやれ、兄として少し気になったことを聞いただけなのに・・・
余計なお世話だったみたいだね。」



イアンは苦笑してスピカを見る。


ミモザは腰に手を当てて、ようやく分かったのねと鼻息を荒くした。




「一国の国王陛下の発言とは思えないわ。」
「国王の前に、僕は1人の兄だからね。」
「そうね。」

イアンの発言にスピカは笑いながら言った。

ミモザはそれを聞いてため息をついた。

「おや、ミモザ、スピカには何も言わないのかい?」
「お生憎さま、貴方と違ってスピカは私の可愛い妹なのよ。」

そう言ってスピカをぎゅっと抱きしめる。

「なっ!! それを言うなら僕の妹でもあるんだよ?」


変な所でイアンは対抗意識を燃やす。
そんな2人の様子をスピカは笑いながら見ていた。




双子のイアンとミモザ、この2人がスピカの兄と姉である。
3人の母親はスピカが生まれてすぐに他界し、父親である先代の国王は母親の分まで
彼らを愛した。
しかし、その父親も1年前に病気で他界し、第一王位継承者であるイアンが王位を継いだのだ。
イアンとミモザは現在25歳。スピカは17歳なので2人との年の差は8歳差だ。



スピカにとって2人は大切な家族だ。
2人もスピカのことをとても大事にしてくれている。
いや、年の離れた妹であるだけに溺愛していると言ってもいい位だ。


とても仲のいい3人の兄妹。
ただ一つ違うことと言えば





兄妹の中で、スピカだけ、髪の色が銀髪だった。





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2006/1/12