Eden


木漏れ日 2



穏やかな笑顔が好き。優しい声が好き。
相手のことを思って、微笑んで手を差し伸べてくれる貴方が大好き・・。

どんなことがあっても、嫌いになんてなれないよ・・・。

でも、以前から気になっていたことがあるの。

リア・・・あなた・・・・







裏庭の大きな木の下に3人は腰を下ろした。
スピカはバスケットの中から出来たてのマフィンやタルトを取り出す。


「じゃーん! チョコチップマフィンと苺とベリーのタルト!」


笑顔でスバルとリアにタルトを手渡す。
2人とも目を輝かせてそれを受け取る。
料理長のディーンの作るお菓子は2人とも大好きなのだ。


「やっぱ、ディーンの作る菓子は上手いよなー!」
「甘みがちょうど良くて。」
「何個でも食べたくなるわ。」


口々に言いながら手は止まっていない。
ふと、リアの方を見るとチョコチップマフィンを口にしていた。


「あ、それね、私が作ったの。」
「!!?」

リアがマフィンを口にしたまま固まった。
スピカはきょとんとしてリアを見る。
どうしたのだろうか・・・?


「・・・・姫さまが?」
「マジかよ!!おい、リア!大丈夫か!? 腹は?無事か!?」
「ちょっと!どういう意味よ!」

リアの肩を掴みガクガクと揺さぶるスバルを見てスピカは思わず叫ぶ。
しかし、声が思わず上ずってしまった。


味見したから大丈夫だと思うんだけど・・・。
まさか、声も出ないくらい美味しくないとか・・・?
でもディーンも美味しいですって言ってくれたし、そんなはずは・・・・。

微かに不安がよぎる。


「いえ、大丈夫です。ちょっと驚いただけですから。」
リアは口にしていたマフィンを飲み込むと微笑んで言った。
「とっても美味しいです。」
「よかった〜・・・。」
ほっとしてスピカも笑顔を浮かべた。
そして今度はスバルを見る。


スバルはしばらく口をもぐもぐさせていたが、暫くして
「ん。美味い。」
と言った。
もう片手には次のマフィンがスタンバイされている。
それを見て、またスピカは笑顔になった。


「自分1人で作ったのか?」
「ううん。少しディーンに手伝ってもらったけど。」
スバルの問いに答えて苺のタルトを口に入れる。
甘酸っぱい苺とほんのり甘いカスタードクリームがベストマッチだ。
この位上手に作れればいいのに・・・とスピカは思う。


「でも、初めてにしては、すっげぇ美味いぞ。お前、もしかしたら才能あんのかもな。」
「ん〜・・・砂糖と塩を入れ間違える人には、そんなのないと思うわ。」
苦笑するとスバルは一瞬青ざめて、前言撤回と言った。






バスケットが空になると、スピカは木の幹に寄りかかった。
日差しがポカポカして眠気を誘う。


「休憩時間はあとどれ位?」

スピカは横を向いてスバルに問いかける。
彼は王宮騎士団の隊長だ。
小さい頃から彼を見ているスピカは、初め、彼が隊長になると聞いたとき
正直耳を疑った。

実力があるのは知っていたが、
スバルは口よりまず手が出るタイプだったし、他の人の意見はあまり聞かない。
自分の興味があること以外には、我関せずといったかんじだ。
そんな彼が、さまざまな人間がいる王宮騎士をまとめる事が出来るのか・・・
かなり不安だった。

しかし、今はそれなりに仕事をこなしてるらしい。
もっとも、副隊長のリアが細かい仕事など、フォローを入れているのも事実だが。

しかし、彼らはこれでバランスが取れているのかもしれない。
リアはリアで自分から率先して皆をひっぱってはいかないから。


「やべ!! 休憩時間過ぎてる!」
スバルが腕時計を確認して叫ぶ。
「だ、大丈夫なの・・・?」
半ば呆れながら尋ねるとスバルはにかっと笑った。
「ま、あいつら優秀だから自分らで訓練してんだろ。」
「・・・。」


スバルが立ち上がりじゃ、ちょっくら行ってくると駆け出そうとするとリアも後に続こうとした。
それをスバルが制す。
「お前はもう少し休んでろ。」
「でも・・・」
「お前、午前中の休憩時間に休んでないだろ? 少し休め。」

そう言うとリアは浮かせていた腰を下ろし、じゃ、お言葉に甘えてと苦笑した。


「午前中・・・休まなかったの?」
「お昼までに片付けなければいけない仕事があったので。」
スピカが眉をひそめたので、慌てて付け加える。
「スバルのじゃありません。僕の仕事ですよ。」
「そう・・・。」
スピカは少し俯いた。


「あまり・・・無理しないでね。」
「姫?」
「リアだけじゃない・・・スバルもここの所忙しそう・・・。」

どこか疲れた表情。目も少し腫れている。
最近、あまり眠っていないのだろう。


「2ヵ月後には記念行事もありますし、その関係の仕事が多いんですよ。」
「・・・。」
「もう少しすれば、仕事も楽になりますから。」
微笑んでそう言うリアはスピカの頭に、ぽんと手を置く。


「・・・・子供扱いしないで。」
「これは失礼。同い年でしたね。」
頬を膨らませるとリアは微笑んで立ち上がる。


「お詫びに姫君、こんないい天気ですし、少し散歩でもしませんか?」





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2006/1/9